グリースとは、潤滑油として使う液体を基油に、これに増ちょう剤と呼ばれる親油性の強い固体を分散させ半固体とした潤滑剤です。増ちょう剤は、スポンジのように、潤滑油を吸収し、潤滑油を閉じ込めます。グリース潤滑では、増ちょう剤に吸収された潤滑油により潤滑性能を発揮します。
*グリースは潤滑油、増ちょう剤の他に、極圧添加剤、酸化防止剤、固体潤滑剤などを添加し、耐久性、耐摩耗性、耐極圧性をさらに向上しています。
静止状態では、増ちょう剤の繊維構造により半体状(ゲル状)ですが、外部からある量以上の力が加わると増ちょう剤の繊維構造が揃い基油(潤滑油)により流動し潤滑します(ゾル状)。
軸受 | 停止 |
増ちょう剤 | 網目構造(ゲル状) |
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説明 | グリースは静止状態(ゲル状) |
回転 | 再停止 |
流動(ゾル状) | 再結合(ゲル状) |
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グリースはせん断力を受け、流動し潤滑する。 | 元の固さに戻る。 |
グリースの性能は、増ちょう剤、基油(潤滑剤)、添加剤の種類の組み合わせにより決定されます。グリースの性能をより判りやすくご説明するため、増ちょう剤、基油(潤滑剤)、添加剤の種類、特長についてそれぞれ解説を行っていきます。
グリース中で増ちょう剤は、細長く繊維状の結晶となって油分に分散しており、この繊維状の結晶が絡み合って網目構造(ミセル)を形成し、このミセルの隙間に油が入り込んで、(スポンジが水を吸収して膨張しているように)半固体状になっています。増ちょう剤により、密閉されていない潤滑部においても、オイル分が流出することなく、潤滑剤としての役割を果たすことが出来ます。
増ちょう剤はその種類により、グリースとしての耐熱性、耐水性、機械安定性に影響を与えます。使用時の温度、使用環境により増ちょう剤を使い分ける必要があります。
増ちょう剤の種類は大きく分けて、石けん基と非石けん基に分けられます。 (表-1参照)
増ちょう剤の種類 | 耐熱性(℃) | 滴点(℃) | 耐水性 | 機械的安定性 | |
石けん基 | カルシウム石けん | 約70 | 約90 | ○ | ○ |
アルミニウム石けん | 約50 | 約80 | ○ | △ | |
リチウム石けん | 130~150 | 約200 | ○ | ◎ | |
リチウム複合石けん | 200~250 | 約300 | ◎ | ◎ | |
非石けん基 | ウレア化合物 | 150~200 | 200~300 | ◎ | ○ |
有機ベントナイト | 150~200 | なし | ○ | ○ | |
PTFE | 200~250 | なし | ◎ | ◎ |
《注意事項》
異種増ちょう剤グリースの混合・混入は、増ちょう剤の繊維形状が異なるため、軟化や硬化・耐熱性の低下などグリースの性能劣化に極端に現れることがあります。 せっかく高性能グリースを入れてもその性能が発揮できないことも考えられますので、変更が必要な場合は前のグリースを十分に取り除く事が必要です。
基油グリース中の80~90wt%をしめ、潤滑性、耐熱性、低温流動性、耐樹脂性など多くの性能を左右します。鉱物油と合成油に大別でき、鉱物油は石油から分離精製で得られたオイル、合成油は使用目的に応じて、人工的に分子を設計して合成されたオイルを言います。また、合成油をベースとしたグリースは、鉱物油にはない様々な特徴を持たせることが出来ます。(表-2参照)
基油の種類 | 耐熱性 | 低温性 | 粘度 特性 |
酸化 安定度 |
金属 潤滑性 |
樹脂 潤滑性 |
耐樹 脂性 |
耐ゴム性 | |
鉱物油 | △ | △ | ○ | △ | ○ | △ | △ | △~○ | |
合 成 油 |
ポリαオレフィン | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | △~○ |
エステル油 | △~◎ | △~◎ | ×~○ | △~○ | ○~◎ | 使用 不可 |
× | × | |
ポリアルキレン グリコール |
△ | ○ | ○ | △ | ○ | △ | ○ | ◎ | |
フッ素オイル | ◎ | ○~◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |
エーテル油 | ◎ | △ | △ | ◎ | ○ | ○ | △~○ | △~○ |
一般的に鉱油を基油としたグリースに比べ合成油を基油としたグリースは高価であり、また、使用目的によっては、合成油を基油としたグリースを用いることで不具合の発生の原因となる場合があるため、グリースを使用する箇所の環境を確認し、どの基油を用いたグリースが適当であるかを検討する必要があります。
その他、グリースの性能を向上させるため、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、摩耗防止剤、固体潤滑剤などが、添加されています。
弊社グリース製品の増ちょう剤、基油(潤滑油)、添加剤を表にまとめました。(表-3参照) 使用目的に応じて、製品をご利用下さい。
製品名 | 増ちょう剤 | 基油 | 添加剤 | 製品情報 | |
金属 摺動面 潤滑 |
ペーストモリブデン B-1 |
ベントン (有機ベントナイト) 金属付着性が良好なため増ちょう剤にベントンを採用しています。 |
鉱物油 | 二硫化モリブデン 二硫化タングステン |
製品情報 |
821S | |||||
インナー パーツ 専用製品 (耐ゴム 性製品) |
ペーストモリブデン B-2 |
主にポリアルキレングリコール耐ゴム性が良好なためポリアルキレングリコールを採用しています。 | 二硫化モリブデン | 製品情報 | |
321ポリコール | |||||
MINIポリコールS | |||||
MT-PASTE80 | 有機モリブデン | 製品情報 | |||
MT-300 | |||||
汎用 グリース スプレー |
ホワイトグリース | ウレア 耐水性、耐熱性に優れています。 |
鉱物油 | PTFE (フッ素樹脂) |
製品情報 |
グリース 製品 |
モリコングリース | リチウム複合石けん リチウム複合石けんは、耐熱性、耐水性、機械的安定性に非常に優れた性能を有します。 |
鉱物油 | 有機モリブデン | 製品情報 |
モリグリス#240 | リチウム石けん リチウム石けんは、マルチパーパスな性能を有します。 |
鉱物油 | 二硫化モリブデン | 製品情報 | |
モリグリス#300 | |||||
モリグリスNo.1 | 鉱物油 | 二硫化モリブデン | 製品情報 | ||
モリグリスNo.2 | |||||
モリグリスNo.3 | |||||
MBグリース | ベントン (有機ベントナイト) |
鉱物油 | 二硫化モリブデン | 製品情報 | |
バイオグリース EL-2 |
リチウム石けん基 | ポリオールエステル ポリオールエステルは、生分解性に非常に優れた合成油です。 |
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